吹奏楽のための組曲第1番
G・ホルスト

 ホルストといえばなんといっても有名なのは管弦楽のために作曲された組曲「惑星」ですが、吹奏楽、金管バンドのための曲でもすばらしい作品をのこしています。なんでもトロンボーン奏者であったことから、金管バンドや軍楽隊には近しかったようです。
 そのホルストが吹奏楽のために書いた2つの組曲は、いずれも名作として、吹奏楽の重要なレパートリーとなっております。

 第1組曲作品28aは、1909年に作曲されました。初演にたずさわったイギリス海軍軍楽隊(Royal Marines)のバスーン奏者の話によると、この第1組曲は演奏者たちに「革命的な印象(Revolutionary impression)」をあたえたそうです。また、指揮者のF・フェネルは「彼の第1組曲の貢献はバンドの将来とその作品の将来に、バンドの世界がかつて得たことのなかった輝かしい作品として大きな資産となったことである」と述べております。

 ハイドンが「交響曲の父」と呼ばれるように、ホルストも「吹奏楽曲の父」と呼べるかもしれません。
 第1組曲は3曲からなっています。作品全体におよぶ統一性への配慮がみられる点が大きな特徴で、「マーチ」の第1、第2主題をのぞく他の主要主題はすべて同じ楽句からつくられています。確かに気をつけてみてみますと、ほとんど全ての主題が<Es-F-C>(あるいは他の調での<ド-レ-ラ>)で始まっています。ブラームスの交響曲第3番の<F-as-F>と同じようなものでしょうか。
第1曲の「シャコンヌ」はバッハのオルガン曲「パッカサリアとフーガ ハ短調」やパーセルの影響をうけた、主題と15の変奏からなる曲です。
第2曲「インテルメッツォ」は、I. Holstの言葉によると「羽毛のように軽い」「はじけるようなスケルツォ」です。民謡風のテーマで開始される4分の3拍子の軽快な楽章です。
第3曲は「マーチ」。ミリタリーバンドの伝統的パターンに従っている一方、ホルストの特徴もよくあらわされた曲です。

以上、参考にしました資料はEMIから出ているCD "Music for Concert Band" のライナーノート(I・ホルスト(ホルストの娘さんでしょうか)による解説)。それからCDの「F・フェネル&東京佼成ウィンドオーケストラ」のライナーノートの秋山紀夫氏の解説。それに音楽之友社から出ている『(最新)名曲解説全集6』(解説は布施芳一氏)でした。