アルメニアンダンス
A・リード
 A・リードのアルメニアンダンスは、アルメニア系の指揮者ハリー・ビジンの依頼をうけて書かれた4楽章からなる組曲です。アルメニア人の音楽家ゴミダス・ヴァルタベット(1869-1935)が蒐集したアルメニア民謡をもとに1972年から76年にかけて作曲されました。

 第1楽章には5つの民謡が含まれています。「あんずの木」から始まったあと「やまうずらの歌」と続きます。この「やまうずらの歌」は蒐集された民謡ではなくゴミダスの作曲によるもので、リードは「単純で繊細なメロディーはやまうずらのちょこちょことした足取りを描いていると思われる」と述べています。次に変拍子が印象的な「ほい、私のナザン」。ナザンとは少女の名前で、これは彼女に対する愛の歌だそうです。4つ目は「アラギアズ」という民謡です。「アラギアズ」とはアルメニアの山の名前です。最後は「ゆけ、ゆけ」という速い曲で第1楽章が終わります。
 第2楽章「農民の訴え」は、山々から風が吹き私の苦難を吹き払ってくれ、という哀願の民謡をもとにしており、ゆっくりとした楽章です。
 第3楽章は「結婚の踊り」です。原題は Khoomar といいますがこれはアルメニアの女性の名前です。「結婚の踊り」の名の通り、明るいダンスソングです。
 第4楽章は「ロリからの歌」です。「ロリ」とは地名です。この民謡はロリの農民が畑仕事をしながら歌う、つまり「田植え歌」です。農民の日々の労働と苦労に直結した即興的な旋律です。

 このアルメニアンダンスの楽譜は第1楽章と第2楽章以降とが別の出版者より出されており、通常第1楽章を「パートI」、それ以降を「パートII」と呼びます。
 初演は「パートI」の部分のみ1973年に、全曲は1976年に、ハリー・ビジン指揮イリノイ大学シンフォニックバンドの演奏により行われました。